作品集「我ら、時」。

 少し時間が経ってしまったけれど、関東地方を雪が覆い尽くす前日の、2/28日夜、USTREAMにて、作品集「我ら、時」の発売が決まったことを、小沢健二本人によって伝えられた。嬉しそうに、仲間とともに喜びをわかちあって。その嬉しさは、画面のこちら側にいる多くの人にも共有できるようで、つながっているようで、嬉しかった。

 以前のひふみよサイトの読み物の中で、小沢健二は、98年くらいからほとんど日本に居たことがないこと、そして日本語のメディアに接することもないという事にふれ、海外に居る邦人が日本語環境と切れない人が多い中で、意識的にそれらから離れているということについて「そういう役割なのかな」と言った。
 当時この文章を読んだ時、「なぜ意識的に離れることが役割なのか?」と疑問に思った。そしてそれはひふみよツアーを目撃することにより、少し理解できたような気がした。
 そして、その疑問の答えになるような言葉が、USTREAMで発信された。

(以下、http://ozaoya.blog122.fc2.com/blog-entry-157.html#moreより引用)

「1997年頃の僕にとって、一番簡単なことはCDを出し続けることでした。その頃の僕はとても人気があったし、レコード会社も周りのスタッフも今思うととてもしっかりしていてセッティングが整っていました。だから、そのまま10枚ぐらいまぁまぁのアルバムを出したり、他の人をプロデュースすることは一番楽にできることでした。続けるというのは、時には一番簡単だったりします。結婚生活も、ただ続けるのが一番簡単だから続けているというカップルもいます。
 当時の僕は自分がやっていることを知れば知るほど、これはこのまま続けてはいけないと言うか、続けなくてもいいことなのかなと思うようになりました。誤解が無いように言っておくと、続けてCDを出しているミュージシャンはとても尊敬しています。でも、僕自身が何をすればいいかというと、それは続けることではありませんでした。でも、音楽が嫌になったから止めたというようなことはありません。むしろ、音楽がとても好きなので続けなくなったという方が当たっています。」

(引用終わり)

 この言葉は、サイトの表紙にもなったOZKN VS USTREAM REMATCにあったコピー、「全ての謎が今、明かされる!」というひとつの答えにもとれる。長き不在の間「意識的に離れた」ということが明かされたのだと思った。

 小沢健二の長き不在というのは、ひふみよ以降の活動において、あまりにも巨大な起爆剤になったと思う。世界中を旅することによって、たくさんの価値観や生活様式、文化や宗教の違いなどを目の当たりにし、体感し、肌で感じた上で、例えばライフというアルバムで歌われたように、その後のシングル群で歌われたように、もちろん、犬でも歌われていたように「僕らの考えてることはそんなに変わらない」という普遍的な確信を得たのだと思うし、人間の根っこはほとんど変わらないんだ、ということを感じたのだと思う。その上で、ひふみよツアーで「この街の大衆音楽の一部であることを誇りに思う」という、小沢ファンをやっていて本当によかった!っていう感動的な彼の言葉の通り、不在以前よりもよりいっそう「伝える」ということに熱心になっているような気がする。そしてそれは音楽だけでなく、文章や、写真など、総合的な芸術を通して「伝える」ということに熱心になっているのだと思う。
 不在以降の記憶や記録、そして「思い」が今まさに炸裂しているのだろう。生まれたての魂みたいなものが、炸裂してるのだと思う。長き不在を帳消しにしてしまうが如く。事実、あのツアーは魂が炸裂していた。小細工なしの直球勝負だった。だから、今回の作品は危険だ。魂がそのまま炸裂している「ひふみよ」の記録は、滅茶苦茶危険。「熱」が思い切りとじ込められた音源と、優しさにふれるような感覚で作られた「箱」の中身ーー写真も、写真立ても、本も、歌詞カードの中で躍る文字も、ボタンも、全てが、小沢健二の全てだ。この宝箱と一緒にこれからを歩ける「我ら」は、確実に時をゆく。そして、小沢健二とつながってゆける。僕らファンは、彼の「ビリーバー」なのだから。

そして、この作品の発売を祝う形で計画された「東京の街が奏でる」「展覧会とポップアップショップ」につながってゆく。
優しい、あたたかな、だけど力強いコンサートと、小さな空間で、小さな音に耳を傾け、色彩豊かな写真やモノクロームの饒舌な写真と語りで小沢健二の見てきた世界を追体験できる展覧会。それはまた別の記事で書きます。(書けたら。)

それにしても!ひふみよライブ危険!!あがる、なんてもんじゃない!本当に、凄い瞬間を一緒に過ごさせていただいたなあと、感謝です。ありがとう、小沢健二!ひゃっほー!

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